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2025年3月4日火曜日

エクセルレベニューマネジメントツール:宿泊予約状況表 > ブッキングペースグラフ

 宿泊予約状況表1:ブッキングペースグラフ

シート構成の全体像にて紹介した「水色シート:宿泊予約状況表」の読み方についての説明です。初回はブッキングペースグラフについてです。※表示している売上は、大型旅館のイメージでサンプル用に加工したものです。

ブッキングペース(月)グラフ

予約売上増加ペース(ブッキングペース)グラフです。上図では2025年3月の宿泊予約売上合計の変化を2024年3月のものと比較表示しています(最新情報2025年2月1日時点)。

横軸は予約集計時点の日付(が月末日に対して何日前か)を表しています。「着地」とは月間売上が確定した時点のことを示します(翌月初4月1日時点)。「30日前」付近が3月 月初時点、「60日前」付近が前月(2月)の月初時点ということです。

縦軸は宿泊予約売上(千円単位)です。

赤の折れ線グラフが今年の売上増加ペース、黒の破線が前年同月のペースです。右端にあるオレンジの●印は、事前に設定している売上予算です。月初時点より右については、利用日が過ぎて確定した売上+残りの日の予約売上がグラフになっています。確定した日はそれ以上売上が伸びることがないため、30日前付近から右は山が緩やかになります。



売上金額がラベル表示されているのは赤色の今年分だけですが、マウスカーソルをグラフ上の任意の場所へ持っていくと前年分についても売上金額を見ることができます。




上図グラフからは、以下の状況が読み取れます。

①今年の予約ペースは去年のペースより良い。前月の月初時点で1435万円のアドバンテージがある(4969万円ー3534万円)。
②この時点ではまだ前年同月実績にも予算にも届いていない。ただし、このアドバンテージを維持できれば両方超えることは確実。
③80日前時点(正月休み明け頃)までは、前年ペースとあまり変わらなかったが、その後一気にペースアップした。

同時に、以下の様な心配もしつつ次へ進んでください。

④アドバンテージの内容は何か?アドバンテージを維持したまま更に売上を伸ばしてゆく余地はあるのか。

例えばアドバンテージの要因が、休前日(土曜日)の予約が去年よりも先行して入ってきているだけかもしれません。となると、休前日はすでに稼働率に余裕が無く(売る部屋がなくて)、これ以上売上を伸ばせないかもしれません。前年はこの後に休前日予約が入ってくるのだとすれば、前年のペースに追いつかれてしまうということも考えられます。

特定の大きな予約が要因かもしれません(特定日や数日の売上で大勝ちしているパターン)。この場合、そのラッキー日「以外」の売れ行きがどうなのかが大事です。小さな勝ちが積み上がっているようなら良いですが、そうでないならラッキーパンチに救われているだけなので良い状況ではありません(団体予約は営業の賜物なので、それをラッキーパンチと呼んでしまうのは良くないですが)。

上図グラフは前年ペースよりも勝っている例ですが、もちろん負けている場合もあります。その場合も考えることは同じで「ビハインドの内容は何か?今後逆転できるためにできることは何か?」といった流れになります。


 宿泊予約状況表シートにあるブッキングペース(月)グラフは、予約の状況を前年との比較でざっくりと掴み次を考えるきっかけを作るものと考えれば良いと思います。

ただ「予約状況登録シートで最初に登録するもの」のページで書いた通り、本システム利用初年度は前年のブッキングペースを表示するためのデータがない状況です。このグラフが本領ほ発揮するのは利用2年目に入ってからということですね。



2025年3月3日月曜日

エクセルレベニューマネジメントツール:宿泊予約状況表 > 日別売上グラフ(前年対比)

宿泊予約状況表2:日別宿泊売上グラフ

シート構成の全体像にて紹介した「水色シート:宿泊予約状況表」の読み方についての説明です。2回目は「日別宿泊売上グラフ(前年対比)」についてです。

このグラフは、ブッキングペースグラフで対象月の予約ペース良し悪しを把握した後に、良い理由(悪い理由)を分析し、日別の販売方針を決めるために使用します。

まずは前年同時期の日別予約状況と比較。


日別予約状況グラフ 設定(前年同時期対比表示)

3月日別売上前年比較(曜日合わせ 同時期時点)
日別宿泊売上グラフ(前年同時期時点予約売上と比較)
※赤枠内の前年時点日付を本年時点日付と同等の日に変更します。

・赤い棒グラフは、2025年2月1日時点の3月日別の予約売上を表しています(横軸が日付、数値軸は左側)。
・棒グラフの背景にある灰色の面グラフは比較対象となる前年の予約売上ですが、これは2024年2月1日時点の24年3月日別売上を、「前年同週同曜日」と比較する形で表示しています。棒グラフが面グラフから突き抜けているところが前年の同時期と比べて勝っている日、面グラフより沈んでいる日が負けている日ということになります。
・黒い折れ線グラフは各日の前年同曜日に対する勝ち・負け額の累計値です(数値軸は右側)。1日は勝っているが2日は負けて少し下がり、その後8日まで勝ちを積み上げて9日の負けで少し下がる...という動きを続け、月間では15百万円弱の勝ちが積み上がっている(折れ線グラフの右端)ことがわかります。

上の例(時点比較)での読み取り例は以下の様な感じです。

※旅館レベニューマネジメントのセオリーについては、「旅館のレベニューマネジメントとホテルのレベニューマネジメントは別物」ページのセミナー資料または「はじめに もしくは あとがき」ページを御覧ください。

●週末(高需要日)の傾向は?

週末では1日、8日、15日、29日が大きく勝ちに貢献している一方で、22日は負けていることがわかります。その他20日に突出した勝ちがありますが、ここは春分の日(木曜祝日)です。翌21日の金曜日も大きく勝てていることから見ると、21日金曜に有給休暇を取っての20日宿泊、21日宿泊といった動きがあるのだろうと想像できます(土曜日料金より安く泊まれる狙い目の日)。対して22日土曜日は休前日宿泊の分散によってやや低い需要となっています。

●平日(低需要日)の傾向は?

棒グラフの低い平日については、概ね前年よりも勝てている様に思われます。

●金・日の傾向は?

棒グラフの高い土曜日の一つ前が金曜、一つ後が日曜ですが、日曜の動きが悪いように思われます(2日、9日、23日で前年に対し顕著に負けている)。金曜は特段悪くなさそうです。

●全体の傾向としては?

黒の折れ線グラフが概ね一定ペースで右上がりになっています。これは、特定の日に大型団体が入っている様な状況ではなく、各日の勝ちが積み上がっての良ペースだということなのでまずは一安心。

とはいえ、全ての日で勝っているかというとそうではなく、土曜日・平日は好調、日曜日と春分の日後の週末に課題がありそうだということがわかります。


前年着地との比較をすれば日別の販売方針が見えてくる。

さて、それでは好調な土曜日・平日は一律で料金を上げてゆくべきでしょうか(→ちょっと待って)。まずは同じグラフを設定を変えて見てください。シート上部にある前年時点日付のプルダウンメニューを翌月初日(着地)に変更します。

日別予約状況グラフ 設定(前年着地対比表示)

3月日別売上前年比較(曜日合わせ 前年着地)
日別宿泊売上グラフ(前年着地売上と比較)
※赤枠内の前年時点日付を翌月初に変更します。

グラフの構成は変わりませんが、前年日別を表す灰色の面グラフの値がぐっと増えるはずです。多くの日で面グラフの方が棒グラフよりも勝っている状態になります。「2月1日の現時点から、この差の分だけ更に売上を伸ばさないと前年同曜日には勝てないよ」という意味です。

現時点で、明らかに前年同曜日着地売上を超えているのが20日(春分の日)。残室がまだあるのならばここは料金ランクを上げるべきでしょう。

土曜日については、残室数次第ですが8日などは料金ランクを上げるべきかどうか悩ましいところです。

他の土曜日はまだそこそこ伸ばさなければいけない状況で料金ランクアップは早急かもしれません。動きの悪い春分の日後の土曜日(22日)などは、逆に1室3名縛りを解いて間口を広げることを検討すべきかもしれません。

平日については、13日のみ前年着地に到達間近ですがその他はまだまだといったところでしょうか。予約ペースは良いのでこのまま様子を見て、13日のように前年着地を超えてくるようであれば料金ランクアップを検討したいところです。


年末年始やGW、お盆などは前年の「日付を合わせて」比較。

平日・週末需要差が顕著な旅館・民宿のレベニューマネジメントでは「前年同週同曜日」の予約・着地との比較をするのが基本ですが、曜日関係なくやってくる年末年始、GW、お盆などについては「前年同日」と比較した方が良い場合があります。

2025年の正月は「年末年始9連休!」と期待されたカレンダー並びでした。しかし成人の日は一週明けて翌週末の3連休。かたや2024年は三が日過ぎて木・金平日のあとすぐに3連休でした。

1月カレンダー2024vs2025
1月カレンダー 2024年 VS 2025年






カレンダーを比較するとこの様な並びです。果たして長期連休の効果は絶大だったのでしょうか。

14日までの休前日の数は24年が5日なのに対して25年は6日と多いので普通に考えれば勝てる日の並びなのですが...。




検証のために、「25.1月」のシートで設定を変えてこのグラフを見てみます。シート上部にある前年日付の合わせ方を「日付を合わせて並べる」に変更します。時点日付は前年も今年も着地(2/1時点)としました。


日別予約状況グラフ 設定(日付を合わせて前年着地対比表示)
日別宿泊売上グラフ(日付を合わせた前年着地売上と比較)
※赤枠内を「日付を合わせて並べる」に変更します。
※時点日付は前年も今年も2/1(着地)にしています。

黒の折れ線グラフに着目してみてください。元旦は前年元旦とほぼ同一ですが、2~4日の休前日(翌日も休みの休日)売上は全て前年に対して勝ち、グラフは右上がりです。考えてみれば前年の3日は連休最終日、4日は平日なので勝って当たり前。

しかし5日~9日で負けが続きグラフは大きく下がります(勝ち負け累計でもうすぐマイナス500万円:右軸)。前年は6~8日が成人の日含む3連休だから負けるのは当たり前かもしれませんが、気になるのは前年は平日だった4日と5日の売上が6~8日3連休に準ずるほど高いこと(灰色面グラフ)。対して今年の正月連休明け平日(6~10日)は極端な低空飛行。

ついで今年の成人の日連休は11~13日。ここも含めて比較しないとフェアじゃないので連休明けの14日や15日付近の勝ち負け累計を見ると...ほぼプラスマイナスゼロだったということがわかります。

休前日の数が一つ多いのにプラスマイナスゼロということは、失敗だったと言って良いでしょう。次回同様のカレンダーに対峙する際の経験値になる事例だと思います。

2025年3月2日日曜日

エクセルレベニューマネジメントツール:宿泊予約状況表 > 表やグラフの構成(全体像)と「見る順番」

宿泊予約状況表3:表やグラフの構成(全体像)と「見る順番」

シート構成の全体像にて紹介した「水色シート:宿泊予約状況表」の読み方についての説明です。3回目はこのシートの全体構成についてまとめます。

非常に情報量の多いシートですが「構成」と「見る順番」を知ることで、素早く、必要に応じて深くまで予約状況を分析することができます。

宿泊予約状況表の全体像
情報量の多い「宿泊予約状況表」
細かなところから見始めてしまうとすぐに迷子になってしまいますが...


宿泊予約状況表シートはこのような構成になっています

宿泊予約状況表(構成)
宿泊予約状況表の構成
表については、左から「前年同月」「本年指定月」「前年VS本年の勝ち負け」の構成です。
最下部に「ブッキングペース」と「日別売上グラフ」の2つのグラフがあります。

表がたくさんありますが、ベースとなるのは「表A:前年の日別状況」と「表B:当年の日別状況」です。これらをもとに、「前年に対する勝ち負け分析(右方向)」や「週別・曜日別・休平日区分別の分析(下方向から右方向へ)」といった分析用の表が配置されています。

最下部には、既に紹介した「ブッキングペース」「日別売上」の2グラフが配置されています。

この表は、動きます!

大きな特徴は、ベースとなる表A・表Bの内容を、時点日付(上図内①②)を選択切り替えして即時更新できることです。時点日付を切り替えると、表AB以外の全ての分析表と日別売上グラフの内容も同時に更新されます。※ブッキングペースグラフの内容は変わりません(日付を変えてもペースが変わるわけではないからです)。

前年・当年の時点日付を最新のもの(最終記録日のもの)に戻したい場合は、右上にある「最新を表示」ボタンをクリックします。
DBシートの直接メンテナンスで、時点日付を変更した場合は一時的に表ABが空っぽになってしまうことがありますが、その様な場合でも「最新を表示」ボタンクリックで解消されます。

また、日別売上グラフの説明ページにて記載しましたが、年末年始、GW、お盆休み期間など、曜日で比較するよりも日付を合わせて前年比較したい場合には「曜日で合わせて並べる」から「日付を合わせて並べる」に変更(上図内③)することで表Aの内容を即時更新することができます。


宿泊予約状況表を見る順番は大から小へ

見る順番として、日別の細かな情報からスタートすることはおすすめしません。分析は大まかなところから始め、必要に応じて細かく見てゆくことが基本です。日常的なレベニューマネジメントにおいては次の順番が良いでしょう。

①ブッキングペースグラフ

まずは現在の予約ペースが前年より良いのか悪いのか、月末の着地見込がどうなりそうかをビジュアルで捉えます。分析例はブッキングペースグラフの説明ページを御覧ください

②表B(当年指定月の表)の合計欄

ついで「現在の月間予約売上(オンハンド売上)がいくらなのか」「前年同月実績まで残りいくらなのか」「設定予算まで残りいくらなのか」といった具体的な数字を確認します。

月間オンハンド売上の前年実績比較・予算比較
月間オンハンド売上の前年実績比較・予算比較
表A・Bの合計欄を比較します。

当年指定月の売上合計は、表Bの月計欄です。対して、前年同月売上(月初~月末売上)は表A下部の枠外にあります(※表A内部の合計欄は曜日で合わせて並べた場合、翌月初売上を含んでしまうため「期間計」となっています)。

前年の時点日付指定にご注意ください。前年実績(着地)に対してどのくらい進捗しているのかを見たい場合には前年の時点日付を翌月初(着地)にする必要があります。

表B下部枠外には、前年月初~月末売上に対する進捗比率、設定予算に対する進捗比率が表示されます。


③日別売上グラフ

現時点での月間売上の良し悪しがわかったら、次は日別の良し悪しを捉える作業に入ります。月間予約売上が前年ペースより良いと思っていても、実は特定日の大型団体売上が良いだけでその他の日は全体的に良くないのかもしれませんし、月の前半の先行予約は良いけど後半はダメといったこともありえます。

そういった日別傾向分析の入口となるのがこの「日別売上グラフ」です。分析例は日別売上グラフの説明ページを御覧ください。前年を「同時期時点日付」で表示させたパターンと、「着地時点」で表示させたパターンの両方で解説をしています。

このグラフを使った分析のポイントは、レベニューマネジメントの対象日について"あたり"をつけることです。前年同時期時点に対して大きく負けている日、前年着地に対して既に勝っている日...と着目してゆくと、対象日は数日に絞られると思います。


④日別予約状況表(表B)と勝ち負け分析表

日別売上グラフにてあたりを付けた日について、表Bで具体的な状況を確認してゆきます。前年同週同曜日に対して具体的にいくら負けているのか、負けている要因は何か(勝ち負け分析表:◎◯▲×の表)、稼働率で負けているのか、ADR(客室単価)で負けているのか、ADRで負けているなら要因は宿泊単価なのか一室あたり人数なのか、一室あたり人数が負けているならば前年は団体が入っていたのではないか、だとしたらこれから個人集客で勝つためには何をすればよいか...と考えを深めてゆきます。

分析事例は追って紹介したいと思います。


⑤大きなキャンセルが出てる?は一番右側で確認できます

予約売上が芳しくない理由として大きなキャンセルが出ている場合もあります。キャンセル発生については「日別の簡易ブッキングペース」や「一つ前の時点予約からの売上増減%」欄を見ると読み取ることができます。

日別の簡易ブッキングペース:金額表示のない簡易的な表示ですが、伸びていたグラフが落ち込んでいる様な箇所があればそれはキャンセルを表します。
※Ver.1.1.0で追加:日別簡易ブッキングペースを任意の日付行でクリックすると、ダイアログが表示され、その日付の詳細なブッキングペースが表示できる様になりました。

例えば、前年の時点日付を同時期で表示し、◎◯▲×の表が前年同曜日に対して×で表示されている日(同タイミングで比較して極端に売上の少ない日)について、詳細なブッキングペースを表示させることで、要因分析に繋がります。

宿泊予約状況表から日別ブッキングペースの表示①
宿泊予約状況表から日別ブッキングペースの表示①
日別の簡易ブッキングペースをクリックすると...

宿泊予約状況表から日別ブッキングペースの表示②.
ダイアログが表示され、①~③のボタンクリックにより...

宿泊予約状況表から日別ブッキングペースの表示③
宿泊予約状況表から日別ブッキングペースの表示③
特定日の予約ペースを分析できるシートが自動で表示されます。


一つ前の時点予約からの売上増減%:本年日別の予約状況(表B)について、現在選択している時点日付の売上 ÷ 一つ前の時点日付の売上を日ごとに比率で表しています。100%を割っていればキャンセルがあったことを表します。また、120%を超えていれば緑の網掛け、80%を下回っていれば赤の網掛けが自動で付きますので、大きく変化した日はどこ?という探し方もできます。


その他の分析表は時間のある時の傾向分析用です

週ごとの集計表、曜日ごとの集計表、休平日区分ごとの集計表などは、日常的にチェックするものでもないでしょう。レベニューマネジメントは日毎の需要変化に応じたコントロールなので、中途半端にまとまった集計値を見たところで施策には繋がりにくいからです。

これらの欄は、例えば月が終わっての振り返り時などで眺めてみることをおすすめします。

例えば...

「露付のAタイプは高稼働なのにBタイプは稼働が上がらない」「露付Bタイプは休前日(土曜)稼働は悪くないが平日稼働が悪い」「露付Bタイプの平日料金に課題があるかもしれない」といった気づきにつながる可能性があります。


エクセルレベニューマネジメントツール:宿泊予約状況表 > 覚えておきたい宿泊業の基本指標(KPI)

宿泊予約状況表4:覚えておきたい(旅館こそもっと活用すべき)宿泊業の基本指標(KPI)

シート構成の全体像にて紹介した「水色シート:宿泊予約状況表」の読み方についての説明です。4回目は宿泊業の基本指標(KPI:key performance indicator)についてです。

宿泊業のレベニューマネジメントについて調べようとすると、理論の紹介サイトが山ほど出てきます。そうなる理由もわかるのですが、理論が完璧に頭に入っていないとレベニューマネジメントできないか?と言われるとそうとも言えず。ただ、出てくる用語に慣れておくことは必要だと思います。ここは用語に親しむことを目標に、できるだけ平易な説明を書きたいと思います。


要は「宿泊売上を伸ばしたい」ただそれだけなのです

ただ、「売上増えろー」といくら念じても増えるわけがないので、具体的に何をすればよいかわかるように「売上が増える」を要素分解して考えることにします。

「宿泊売上を伸ばす」を要素分解①
「宿泊売上を伸ばす」を要素分解①

宿泊業の場合、売られている宿泊プランは部屋に紐づいています。なので売上を伸ばすための要素として「たくさん部屋を売る」「部屋をなるべく高く売る」の2つがまずは考えられます。この「どちらかを実現する」でも良いですし、「両方実現する」でも良いです。「一方が減ってももう一方が増えて結果的に売上が伸びる」ならそれもOK。


「部屋あたりの売上を伸ばす」には

部屋の売上は、いくらの料金のお客様が何人その部屋に泊まったかで決まります。

「宿泊売上を伸ばす」を要素分解②-1
「宿泊売上を伸ばす」を要素分解②-1

ですから「一人あたりの宿泊料金を上げる」「一室の利用人数を多くする」の2つが方法として考えられます。こちらも「どちらかを実現する」でも良いですし、「両方実現する」でも良いです。

少々脱線しますが...
料金コントロールに集約されるホテルのレベニューマネジメントと違って、旅館や民宿のレベニューマネジメントで重要なポイントがここです。

まず「一人あたりの料金」は設定料金だけでなく、食事の有無(一泊二食以外にも、一泊朝食、一泊夕食、素泊まり...)や、料理のランクによっても大きく変動します。どの形態のプランを販売するか/売り止めるか をコントロールすることは、設定料金の変動だけでは到底なし得ない金額幅を生み出します。

次に「一室の利用人数」ですが、ベッドではない和室の場合一部屋1名~5名以上でも泊まれます。ホテルは基本1名か2名なのでこちらも大きな変動幅です。「だからどうした」と思われるかもしれませんが、ここの変化は思いのほか売上への影響が大きいのです。

例えば20室の宿で1名1万円のプランで満室にできたとして...
一室平均1.50人だと売上は30万円
平均2.00人だと40万円
平均3.00人だと60万円 と大きく変わってきます。

一室平均1.50人のまま60万円を達成するためには1名2万円のプラン(倍額)で満室にする必要がありますが、難しそうですよね。

「一室人数のコントロールと言われても、それはお客様の事情なので...」と思われるかもしれませんが、実務でコントロールすべき内容は簡単で「1名1室を売る/止める」「2名1室を売る/止める」の2種類だけです。

部屋が多く余るような日であれば一人旅まで取りに行って売る部屋数を少しでも増やす(一室人数は下がるけど宿泊単価と稼働率が上がる)。満館近くが予想される日ならば、最初は2名1室は止めておいてファミリー、グループの比率を上げる。残り1ヶ月を切ってきて満館が遠そうならば2名1室を開放し、夫婦・カップルを受け入れます。


「売る部屋数を増やす」と言われても...

製造業や小売業と違い、満館以上はどう逆立ちしたって売れないのが宿泊業の足かせです。

「宿泊売上を伸ばす」を要素分解②-2
「宿泊売上を伸ばす」を要素分解②-2

販売可能な客室数は基本的に毎日固定。ですから「売る部屋数を増やす」とは即ち客室稼働率100%(MAX)を目指すということです。


「宿泊売上を伸ばす」ためには

ここまでの要素をまとめると次の通りです。

「宿泊売上を伸ばす」を要素分解③
「宿泊売上を伸ばす」を要素分解③

「一番高位の料金プラン」「すべて定員宿泊」「全部屋が埋まる」が毎日続けば文句なしなのですが、当然そんな訳にはいきません。むやみに高くすれば売れる数が減るのは世の常です。
だから日によって異なる需要を見ながら「どこを伸ばして(どこかを落としてでも)売上を伸ばすか」を考えることになります。これがレベニューマネジメントです。
※レベニューマネジメントの考え方については「旅館のレベニューマネジメントとホテルのレベニューマネジメントは別物」ページに掲載したセミナー資料や「はじめに もしくは あとがき」ページ等を御覧ください。今回は用語についての説明なので詳細は割愛します。

これらの要素それぞれに名前が付いています

「宿泊売上を伸ばす」要素とそれぞれの名称
「宿泊売上を伸ばす」要素とそれぞれの名称

A.一人あたりの料金UP ⇒ 結果は「(平均)宿泊単価」にあらわれます。
B.一室の利用人数UP ⇒ 結果は「一室平均人数(一室あたり人数)」にあらわれます。
C.客室稼働率UPは、そのまま「客室稼働率」です。

D.一部屋あたりの平均売上のことを客室単価(ADR)と呼びます。これはAの成果とBの成果のかけ合わせだということがわかります。

「宿泊予約状況表」ではレベニューマネジメントのために、主に前年同月(同週)同曜日の予約売上・実績売上との比較を行いますが、単純に売上が勝っている・負けているだけではあまり発展性がありません。どの要素が勝ち(負け)に影響しているのかを知ることが販売施策検討の鍵なのです。


もっと詳しく知りたい!という方は...

用語の意味についての説明はここまでです。エクセルレベニューマネジメントツール「予約の動きをサトルくん」にもこれらの用語が出てくるので参考にしていただければと思います。

以下は計算方法を含めもっと深く知りたい方向けの説明です。

宿泊基本指標の計算方法と関係性
宿泊基本指標の計算方法と関係性

まずは各指標値の計算方法です。

A.宿泊単価は「一人平均いくらで泊まったか」なので、売上を人数で割ります。
B.一室あたり平均人数は、その名の通りで人数を販売室数で割ります。

ここでA×Bについて、昔懐かし”約分”をすると... 売上 ÷ 販売室数 となり、これはつまりD.一部屋あたりの平均売上(客室単価:ADR)ということになります。

一方、C.客室稼働率は「全客室数のうちどれくらい売れたか」なので、販売室数を販売可能な客室数で割ります。ここで出てくる販売可能客室数(有効客室数とも呼ばれます)ですが、年間の客室稼働率を算出する場合には「販売可能客室数=自館の総客室数×365日」で算出します。

さて。客室単価(ADR)と客室稼働率をかけ合わせるとどうなるでしょうか。この計算式も約分をすると、売上÷販売可能客室数という式がでてきます。これは「一部屋あたり一日あたりの平均売上」という意味です。RevPAR(Revenue Per Available Roomの頭文字)と呼ばれます。

レブパーって何よ?一部屋あたり一日あたりの平均売上がわかったところでどうなるの?と思うわけですが、これは総客室数の異なる複数の宿を比較するときに有効です。100室の宿と20室の宿を単純に売上で比較するとどうしても100室の宿の方が優秀に見えてしまいますが、「一部屋あたり一日あたりの平均売上:RevPAR」で比較すると客室規模関係なく比較できるというわけです。


ここで主に旅館向けPMSのベンダーさんに一個注文。ここまでレベニューマネジメントのための指標と計算方法を説明してきましたが、計算のもとになる数字は4つしかないということに注目してほしいです。4つの数字とは「宿泊売上」「宿泊人数」「販売室数」と「総客室数」です。この4つがわかればあとは全て計算で出せるのに、この情報が揃っていない(一部が欠けている)帳票が多すぎるのです。

例えば「宿泊売上」「宿泊人数」「客室稼働率」が出力されている帳票だと「一室あたりの人数」と「客室単価:ADR」が算出できません。客室稼働率×総室数で、欠けている「販売室数に近い数字」は出せますが、丸まった数字をもとにしているため正しい数字にはなりません。旅館の売上アップにおいて「一室あたり人数」「ADR」の要素は非常に大事な指標なのですが、ないがしろにされているなぁという印象です。


算出した各指標値の「端数をどこで丸めるか」も大事なポイント。ちゃんと意味があって決まっているものなのです。

先に答え(決め事)を書きます。

A.宿泊単価:小数点以下は不要で「円単位」※ADR、RevPARも「円単位」

B.一室あたり平均人数:小数第二位までで「X.XX人」

C.客室稼働率:小数第一位までで「XX.X%」

円単位のものを小数点以下まで表示して20,000.4円などと表記すると見づらい、というのももちろんありますが、以下の様な例を見ると理にかなった表記なのだとわかります。


例)50室の宿で宿泊単価2万円、一室平均2.50人、稼働率60.0%の宿があったとします(いずれも年平均)。年間売上は、20,000円×2.50人×60.0%×(50室×365日)=547,500,000円です。


ここで、例えば宿泊単価の表記を少数第一位まで管理するとします。平均値が20,000.0円が20,000.1円に上がったとして年間売上がいくらアップするかというと...

20,000.1円×2.50人×60.0%×(50室×365日)=547,502,737.5円 アップ差額はたったの2,738円でほとんどインパクトがありません。見づらいのを我慢して小数点以下まで管理する必要は無いということです。


次いで、一室あたり人数を小数第一位までしか管理していなかったとします。2.5人が2.6人に上がるとどうなるかというと...

20,000円×2.6人×60.0%×(50室×365日)=569,400,000円 アップ差額が2190万円にもなってしまうので、これでは粗すぎることがわかります。

逆に小数第三位まで管理して2.500人が2.501人になったとすると...
20,000円×2.501人×60.0%×(50室×365日)=547,719,000円 差額21.9万円。5億4千万円の売上に対してはインパクトが小さすぎる。


最後に、客室稼働率を小数点まで管理しない場合。60%⇒61%の変化では...

20,000円×2.50人×61%×(50室×365日)=556,625,000円 差額が912.5万円にもなるので粗すぎる。

少数第二位までの管理で60.00%⇒60.01%の変化では...

20,000円×2.50人×60.01%×(50室×365日)=547,591,250円 差額9.1万円はインパクトが小さすぎです。


実は、これは単なる「管理上の決め事」という話にとどまりません。

この宿で、次年度の年間売上予算を各指標値からの積み上げで作ることを考えてみればイメージしやすいと思います。

最終桁の数字を1上げるだけで年間売上が1千万円違ってくる様な数字の捉え方だとざっくりしすぎていますし、逆に1上げても数十万円程度しか変わってこないのであれば、その設定値1の違いは何か意味があるの?という話になってしまいます。

そして、一室あたり人数の影響力がいかに大きいかがここでもわかります。数字だけ見ると0.01人の違いが何なのという気分になりますが、年間売上にすると219万円もの差になるのですから。※20,000円×2.51人×60.0%×(50室×365日)=549,690,000円


旅館向けの各社PMS帳票を見ていると、稼働率表記に小数点がなかったり、そもそも一室あたり人数の表記がないものが殆どだったりします(ホテル向けPMSだと英略語表記で必ずあります)。

ホテルだからとか旅館だからとかは関係なく、宿泊業の売上指標の考え方は同じです。

そして宿泊単価に関連してくるプランバリエーションの多様性、一室あたり人数のインパクトが圧倒的に旅館の方が高いことを考えると、むしろ旅館こそこれら指標値をしっかり見るべきなのではないでしょうか。